神奈川県麻生区に位置する既存住宅の建て替えである。
敷地は竹林を中心とした豊かな既存樹木に囲まれた斜面地で、この土地の起伏にそった計画とするため一部地中となる1階はRC造、2階は周囲の木々に馴染み気配が消えてゆくように木造の混構造による設計とした。この地で育ったクライアントの建屋の建て替えのため、外観や配置には以前の建物の記憶を外観の色や素材、形態の要素として散りばめることにより新しい原風景を周辺環境に緩やかに引き継げるよう配慮した。西側に面する竹林に呼応するようにRC部の杉型枠や木造部の焼杉の外壁の巾は敷地に自生する竹の太さと同程度の120mmとし、開口部のモジュールなども割付に合わせるように見付60mmとして清閑なファサードとした。また内部は外壁の1/2を外枠見付、1/4を内枠見付として寸法の整合をとった。
アプローチより奥に導かれ、陰影と空間の広狭、高低の反復を体感しながらパブリックな吹抜空間を通じ自然と1階へ導かれるような動線を確保しつつ、見え隠れによる空間の奥行の演出を行なった。また1,2階とも回遊式の動線を幾重にも仕掛けることにより、生活に奥行きが出るような平面計画とした。外部の黒い箱とは対照的に内部は灰白色の空間で、どの壁も四季のリバウンドした光を受け、クライアントの多彩なコレクションを展示する壁となるような空間づくりを目指した。
都市近郊の斜面地での宅地開発が進む中、この楽土の記憶が消滅し人の生活が移動と擬似的に整えられた建屋の中に閉じ込められている現代日本社会の中で、都市と距離を置いた非都市に住まうことの意義を見出しながら、この家が新たな原風景の起点としてこの土地で閑静な生活を守る家になると思う。
 

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