旧軽井沢に立地する、通年利用の別荘である。
道路から見るとちょうど基壇のようなこの敷地には自然の木々が垂直に、不規則に、季節ごとにその様相を変えるように植生している。敷地の特性上自然と対峙すべく自然にもとけこむ家、季節の自然光と風景を最大限に生かしつつ、包まれるような家としての設計が求められた。結果は家としての原風景と幾何学を同居させ、それを極力純化させることに尽力し、素材によりその象徴性を鈍化させるという手法をとった。
プランは単純な正方形の組み合わせと黄金比により構成された厳密な尺寸法のグリッドにより構成され、最大限の効果がうみだされるように単純化を計りつつ開口の配置もこれに従うように考慮した。また動線に対して、天井の高低や部屋のサイズに規則性を持たせ、コントラストを強調させた。断面は正三角形を用い別荘らしい伸びやかさを出すためメートルモジュールにより構成し、そのすべてが幾何学により支配される形態を構成した。
自然の開放性や、やさしさだけでなく自然のもつ闇や恐怖を建築の幾何学や壁による対峙により、人間に安心感や象徴性をふき込めるのではと考えた。原風景のイメージを強調するため、照明にはアンティークのPHランプをもちいた。
純化されたプランと自然と対峙する幾何学、光の限定と抽象、そして家としての原風景のイメージの共存と象徴性。